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2008学校教育総合研究

11 名前:酒井:2008/05/23 02:22 ID:GPS7nlnM

5月15日(木)の講義録です。担当は、学校教育専攻 教育心理学分野の酒井です。
今回は、導入にパワーポイントで「社会的スキルの考え方」を説明した後、
対人的な行動としてのスキルについて、自分の研究に位置づけながら発表させていただきました。

質疑応答の中で、
@社会的スキルの技術が身に付いてないと、不利益を被るか、その力をつけてやれば、
生きやすくなるということか?
A属している集団や文化・主義によって身につけたいスキルは異なるか?
B社会的スキル訓練は、頭でっかちなマニュアル人間を作ってしまうのでは?
等の、意見が出されました。

これらについて、私なりの考えを述べてみますと、
@については、社会的スキルの不足の人は、自らの稚拙な反応で対人関係を否定的にしているにも関わらず、
失望感、疎外感、空虚感、誤解されているという感じをもつようになり、孤独感を高めてしまう
傾向があります。
これらに何とか対処するための新たな視点として、社会的スキルトレーニングが出てくるわけですが、
人間関係や心理的問題をスキルで捉え、技術論にしてしまうことに批判はあるかもしれません。
しかし、とらえどころのない人間関係を目の前にして、手をこまねいているか、それとも、不十分
なりにも一つの立場からそれに立ち向かおうとするのか、どちらを選ぶかは、人間関係に対する
「哲学」の違いであり、人生の過ごし方の違いです。社会的スキルで人間関係を捉えることによって、
新たな視点や生産的な解釈が成り立つのであれば、それはそれなりに意義あることではないでしょうか?


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12 名前:酒井:2008/05/23 02:24 ID:GPS7nlnM

(続き)
Aについて
それぞれが属している集団や文化は、特定の行動パターンを、個人に要求します。
討議の中でも、アルバイト先の対人関係の例を挙げ、その場における対人反応を実行することが、
社会的スキルの適切性にかなうことではないかとの意見も出されました。ただ、そうなると、
小さな文化や集団でのみ通用するスキルが個々バラバラに多数存在することになります。
したがって、この点については、一方には、どのような文化・集団にも通用する普遍的な社会的
スキルがあり、他方には、文化や集団の影響を影響を受けやすい社会的スキルもあると考えるべき
ではないでしょうか。

Bについて
社会的スキルトレーニングは、対人関係や社会生活に必要な原理や原則・基本的なやり方を教える
トレーニングです。その際、確かに一定のパターンを重視して「かたち」から入りますが、最後は、
「かたち」から抜け出すことを目標とします。「かたち」から入って「かたち」から抜け出すのは、
我が国にたくさんある「道」が目指すものと通じるところがあります。茶道・華道・柔道・剣道とか、
歌舞伎・能・舞踊等の芸道も、マニュアルに則り、「かたち」から入ることを重視します。
「形」の模倣から始まり、「型」を習得し、最後は「精神」や「真髄」と呼ばれる境地に行くのだそう
です(生田1987)。社会的スキルトレーニング(SST)も、人から与えられたマニュアルを、各自が
自分のものとし、更に自分に合ったマニュアルを日々書き換えていく必要があります。
そう考えると、SSTは、マニュアル人間を作るのではなく、むしろ「脱マニュアル人間」を作ろうと
するものだと捉えられますね。

《コメント》
社会的スキルやSSTは、絶対的なものではなく、社会的スキルは、人間関係に関する一つの観点であり、
SSTは、いくつかある心理療法の一つであると考えます。
最近は、学校教育の中でも、SSTへの過度の期待もあるようですが、SSTは、何にでも効く「万能薬」
でも、特別著しい効果を発揮する「特効薬」でもありません。これからも、実施する前には使用上の注意を守って、
正しく使っていこうと思います。
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